詩素17号に詩「案山子」掲載

   2024/11/03

洪水企画刊「詩素」17号に、 詩「案山子」が巻頭掲載されました!

この詩誌は、執筆者同士が作者名を伏せられた状態でお互いの原稿を読み、投票し合って3点前後の作品が巻頭に選ばれます。
今回はなんと10票を頂き、5度目の巻頭に選ばれただけでなく、初めての首席(pp.2-3)に輝きました。

どちらかというと地味な作品かなーと思っていたので、驚きです。
もちろん競うのが目的ではありませんが、たくさん票が入るということはたくさんご感想を頂戴できるということなので、それが何よりも嬉しいのでした。

割と具体的な描写の多い物語詩、なのですが、その情景や登場人物の振る舞いについては想像に委ねる部分が大きかったためか、読み手によって受け取るイメージが異なっていたようです。
頂戴したコメントを下記に掲載順でご紹介します。

「アルアルの題材ですが、ばあちゃんの心根の出し方が容赦なく上手いと思いました。案山子にカラスは付き過ぎるので避けるかと思ったらやり切ったのにもびっくりです」(野田新五さんより)

「じいちゃんそっくりの役立たずの案山子?と、ばあちゃんとの関係にカラスの所作を実に良く加入させ描写した物語詩。無機質な案山子に命を与え人間の根本的な営みをさらりと描いている」(まれびと・水島美津江さんより)

「案山子が象徴するもの。じいちゃんという具体的なものに加えて、別のもっと抽象的なものが込められていて、類型性を排しており、興味深く読めた」(新延拳さんより)

「じっくりと味わいのある作品と思います。じいちゃんに対するばあちゃんの複雑な思いが、客観的にユーモラスに歌われていて、しかも成敗をカラスに背負わせているとは。人物像も鮮やかで堪能しました」(平野晴子さんより)

「ラストのカラスが覗いたのっぺらぼうの顔がいい。帽子の下に顔がない……を連想しつつ」(八覚正大さんより)

「静かに始まって逃げ場のないところまで追い詰められていくスリル感。最後の行の(のっぺらぼうの顔を)のリアル感が世界を広げている」(坂多瑩子さんより)

「ひっそりと暮らす老いた農婦の姿と思いきや、最終二連であっと言わせる暗転がある。詩の中でおばあさんは何も話さないのだが、夫に対する気持ちが伝わってくる描写が見事だ。末尾のカラスたちのやかましい様子にユーモアを感じた」(南川優子さんより)

「死んでいても赦してもらえないなんて、じいちゃんは何をしてしまったのでしょうか…。想像膨らむ詩です」(酒見直子さんより)

「愛と憎しみは紙一重。ばあちゃんはじいちゃんを深く愛していた。そしていつしか赦していたのだと思う。ばあちゃんは案山子をじいちゃんとして側にいたかったのだ。最終連の展開が面白かったです」(沢聖子さんより)

「磔刑、雪面に蒼く映しだされて。もういいかげん赦してあげたら? 恐いね。牧歌(いや、遠目に人影がちらとみえてはいました)がすっとあとずさる。恐いね。お茶を濁すぐらいのわきまえ、うまいですね。この距離感。詩とはいったいなにものか? なんてことを考えてしまいました」(大仗真昼さんより)

物語を散文ではなくあえて詩で書く意味、などを気にする向きも世の中にはいらっしゃると思うのですが、こうした詩に好意的なご感想がいただけるのは、私のような書き手には本当にありがたく存じます。

なお巻末の「近況雑感」コーナーには、7月に訪れた三松正夫記念館についてのエッセイを寄せています。

「詩素」16号の執筆者は二条のほか、海埜今日子、大仗真昼、大橋英人、小島きみ子、坂多瑩子、酒見直子、沢聖子、大家正志、高田真、南原充士、新延拳、野田新五、肌勢とみ子、八覚正大、平井達也、平野晴子、南川優子、八重洋一郎、山中真知子、山本萠、吉田義昭、池田康(敬称略)。まれびとは水島美津江さん。

今年6月に逝去されたたなかあきみつさんの追悼特集に、高橋団吉・有働薫・広瀬大志・生野毅の各氏もご寄稿くださっています。

定価は税込500円、ご注文は発行元の洪水企画までどうぞ。

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