詩素16号に詩「冬の道」掲載

 

洪水企画刊「詩素」16号に、 詩「冬の道」が掲載されました!

2024年5月1日発行の「詩素」16号、拙作はpp.18-19に掲載されています。

「マタル」というアイヌ語を知ったのは10年ほど前、白老町に住んでいたころのことです。
文字通り訳せば「冬の道」。河川や沼沢が結氷することによって開通する、夏とは違うルートを意味するのだとか。

近所にポロトという大きな湖があった(当時は民営のアイヌ民族博物館があり、今は国立のウポポイが立っている)のですが、そのすぐ近くに、まったく観光地化されていないポントという小さな沼もありました。
立入禁止等の案内はなかったものの、ぐるりを鬱蒼とした草木に囲まれていて、散策路どころか獣道さえ見当たらない、まさに秘境。
ある冬、ポロトのワカサギ釣りが解禁されるころを見計らい、その沼の凍結面を渡って対岸へ行ってみたことがありました(※よい子はマネしてはいけません)。

夏の間は遠く眺めるしかなかった向こう岸に、特別な何かがあったわけではありません。ささやかな林の中に、さまざまな野生動物たちの生息痕を観察できただけ。
しかしその日、北国にとって冬とはどこへ行くにも不便な、道を閉ざされる季節だ…と思い込んでいた私の意識に、一筋のマタルが開けたのでした。

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さて執筆者アンケートでは、有難いことに7名の方々から票をいただきました。頂戴したコメントを下記にご紹介します。

「私が、自身の心象風景として表現したいと思いながらも、完成させることができなかったことを、見事に表現されていて、『参りました』と言わざるを得ない。特に終わりの三行が秀逸でした。」(肌勢とみ子さんより)

「この荒涼とした白銀の道を渡っていくのは誰なのでしょう。誰でもなくて誰でもあるとおもえる道。励ましの声が最後まで寄り添うのです。絶望のその先にある救いのようなものというのでしょうか。しみじみと諭すような眼差しに、思わず身を投げだしたくなりました。」(平野晴子さんより)

「きれいな詩。勇気を振り絞り『ひとり分の重みだけで』踏み出す一歩は決して無駄ではないのですね。」(酒見直子さんより)

「地味な作品だが、心惹かれるものがあった。」(高田真さんより)

「この風景は近しい。そのように夏の雑木林を秋の野を冬の森を歩き回ったのだ。雨の午前、くもりの日の午後、星降る夜を。緊張感。詩の初心を読んでいるようでみずみずしい。ひとり分の重みが確かにとどまり・・・・、たしかにとどまるか?」(大仗真昼さんより)

ご感想の方向性がそれぞれ異なっていたのも、興味深く拝読しました。

巻末の「近況雑感」コーナーには、3月に初めて訪れた大阪とお好み焼きの思い出を寄稿しています。

「詩素」16号の執筆者は二条のほか、海埜今日子、大仗真昼、大橋英人、小島きみ子、坂多瑩子、酒見直子、沢聖子、大家正志、高田真、南原充士、新延拳、野田新五、肌勢とみ子、八覚正大、平井達也、平野晴子、南川優子、八重洋一郎、山中真知子、山本萠、池田康(敬称略)。
まれびとは松下育男さんです。(それにしても、毎号ゲストが豪華ですよね…)
定価は税込500円、ご注文は発行元の洪水企画までどうぞ。

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